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「建物状況調査」は、買主の泣寝入り制度です!

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今回は、前回に続いて「建物状況調査」の不備についてお話をします。

            下記写真 : 不同沈した建物の床下間仕切り基礎のひび割れ

「建物状況調査」で現実的に問題が起こりうる事をシミュレーションしてみます。

題材は、「建物状況調査の結果の概要」に記載されている劣化事象欄の中の、

基礎の劣化事象欄の「有る」にチェックが入っているだけの建物で、

その「建物状況調査」を売主サイドで実施した瑕疵担保責任免責の建物としてのシミュレーションしてみます。

シミュレーションの時系列として

「建物状況調査の結果の概要」に記載されている基礎の劣化事象とは、

0.50mmと0.55mmのひび割れの劣化事象の事です。

この基礎の劣化事象のひび割れを補修して、既存住宅瑕疵保険に加入出来たと仮定します。

購入者が契約後、瑕疵保険に加入して引渡しを受けました。

ここからが、今回のシミュレーションに於いて問題が発生します。

購入者が契約時に、仲介業者からインスペクション業者斡旋の可否を問われましたが、

その時点でインスペクションを依頼する状況では無かったので、

契約後に、自分でインスペクション業者を探してインスペクションをする事に決めました。

重要事項説明に於いて、売主サイドが実施した「建物状況調査の結果の概要」に記載されている

基礎の劣化事象を、売主と双方で確認し、契約を締結させました。

ここから大きな問題に発展します。

自分が依頼したインスペクターに、床下・屋根裏を含めた 「住宅診断」 を依頼した結果、

その報告書の総合判定に、「不同沈下有り」の瑕疵事象が確認できますと記載されていました。

その瑕疵事象の内容は、

床の傾斜が部屋の中央から法面に向かって8/1000前後の傾斜が確認でき、

且つ床下に入って調査した結果、

0.90mm前後の貫通クラックが法面に並行して入っている事が確認され、

尚且つ食器棚が床がへの字に傾斜している事でガタゴトする事も分かり、

建物の近くに有る6m低くなっている法面側に傾いている事が判明したのです。

既存住宅瑕疵保険に加入する為の検査基準に合格し、瑕疵保険に加入しているにも関わらず。

怒った購入者は、仲介業者にクレームを入れましたが、

重要事項説明で建物の劣化事象を双方で確認しましたから、クレームを言われてもどうする事も出来ません。

と言われてしまいました。

そこで、既存住宅瑕疵保険に加入しているので保険で直そうと瑕疵保険法人に相談しました。

瑕疵保険法人は現地で調査した結果、

床の傾斜計測する測定間距離3m未満での6/1000以上の傾斜は瑕疵と認めないと判定され、

保険も出ない事が判明しました。

さて、購入者は誰に責任を取ってもらえるのでしょうか?

私見としての回答

購入者の泣き寝入りになると考えます。

何故ならば、「建物状況調査」を実施した建築士に不同沈下を調査する義務が有りませんし、

既存住宅瑕疵保険の検査基準はクリアしていますので、建築士の義務は果たしています。

売主(個人)は、仲介業者のインスペクション業者の斡旋で「建物状況調査」をし、

瑕疵担保責任免責で契約しているので、責任は問えません。

仲介業者もインスペクション業者の斡旋をし、

かつ重要事項説明で相互に劣化事象を確認して契約していますので義務を果たしています。

つまり、誰にも落ち度は無かった事になります。

一つの問題点として

買主に対するインスペクション業者斡旋の可否を問う時期に問題が有ります。

宅建業法改正に伴う買主に対するインスペクション業者の斡旋可否を問う時期は、

媒介契約時となっています。

しかし、実際には、買主に対する媒介契約は、中古住宅の売買契約時にする事が慣例になっています。

(今回のシミュレーションもこの段階での斡旋可否を問う場面にしています。)

ここの所で仲介業者サイドが融通を利かし、買主との媒介契約時に斡旋するのではなく、

媒介契約時とは関係なく、物件紹介時にインスペクション業者斡旋可否を問い、尚且つ、

ただ単に劣化事象の有無を調査するだけの 「建物状況調査」 ではなく、

劣化事象の原因を目視の範囲で調査する 「住宅診断」 を、

床下・屋根裏に入っての調査も含めて出来るインスペクション業者を斡旋する事が、

仲介業者サイドにとってのベターな選択と思います。

今回の纏めとして

結局 「建物状況調査」 は、買主サイドにとって 「百害有って一利無し」 という結論になってしまいます。

この事と、「既存住宅瑕疵保険加入の為の検査」 と 「瑕疵保険の保険が降ろす基準」 が分かりづらい事。

つまり瑕疵保険は簡単には降りません。

瑕疵を補修する費用を降ろすハードルが高い事を考慮しないといけません。

今後は、このシミュレーションと似た様な事例が、現実に多く発生すると考えられます。

「建物状況調査」は、床下・屋根裏に入っての調査をしない、劣化事象の有無を調査するだけの制度です。

「住宅診断」の場合は、劣化事象の原因を目視の範囲で調査する為、

「建物状況調査」と比べて、買主サイドが泣き寝入りする確率は、大きく減少すると考えられます。

ゆえに、買主サイドの自己責任で、床下・屋根裏に入っての 「住宅診断」 を依頼する事をお勧めします。


今回は、これで終わります。